ストキャスティクスが測るもの:範囲の中での位置
ストキャスティクスは、直近14本の最高値と最安値の間で、いまの終値がどのあたりにあるかを0〜100で表します。%K = (終値 − 14本の最安値) ÷ (14本の最高値 − 14本の最安値) × 100 で、最高値と最安値は、いまの足を含む14本の高値・安値から探します。たとえば14本の最高値が110、最安値が90、終値が105なら、%Kは75です。100なら終値が14本の最高値で、0なら最安値で引けたという意味です。この指標を広めたジョージ・レーンの考えは、買い手が優勢な間は終値が範囲の上のほうで終わることが多く、売り手が優勢なら下のほうで終わることが多い、という観察でした。足が終わるころに誰が価格を握っていたかを、範囲の中の位置で要約しているわけです。注意したいのは、分母が14本の高値と安値なので、長いヒゲ1本が範囲を大きく広げると、その後14本の間は値が押さえつけられて見えるという点です。14本ずっと価格が一つの値で止まり高値と安値が同じになると、分母が0になって値が計算されず、取引の少ない銘柄でときどき起こります。
%Kと%D、ファストとスロー
%Dは%Kを3本単純平均した線です。上の式をそのまま使ったものをファストストキャスティクス、%Kを先に3本平均してなめらかにしたものをスローストキャスティクスといいます。スローではファストの%Dが新しい%Kになり、それをさらに3本平均したものが%Dです。設定はふつう(%Kの期間、%Kの平滑化、%Dの平滑化)の3つの数字で書きます。TradingViewの標準は(14, 1, 3)でファストにあたり、この記事の図は(14, 3, 3)のスローで計算しました。スローは平均をもう一度とるので、ファストよりぎざぎざが少ない代わりに、1本ほど遅れて動きます。チャートによって値が違うときは、まずこの3つの数字が同じかどうかを確かめるとよいでしょう。ファストをそのまま使うと、足ごとに%Kが20から80へ跳ぶことが多く、クロスが出すぎるので、実際にはスローを使う人が多くいます。逆に平滑化を大きくすると線はなめらかになりますが、範囲の端に届いたことを数本遅れて知らせます。どの設定でも「揺れが少ない代わりに遅い」という交換から逃れることはできず、同じストキャスティクスという名前でも3つの数字が違えば別の線です。
- ファスト%K:式のまま(平滑化1)
- ファスト%D = スロー%K:%Kの3本平均
- スロー%D:スロー%Kの3本平均
RSIと何が違うのか
どちらも0〜100ですが、測るものが違います。RSIは終値だけで直近の上昇幅と下落幅の比率を測り、ワイルダー平均のため古い動きも少しずつ残ります(RSIの記事)。ストキャスティクスは高値・安値・終値で14本の範囲の中の位置を測り、14本が過ぎると、その足の高値・安値は計算から完全に抜けます。そのため大きな高値が計算の範囲から抜ける足では、終値が横ばいでも値が大きく跳ねることがあり、RSIより0や100の近くまで行くことが多くなります。同じチャートでRSIは60台なのにストキャスティクスは90台、ということも起こります。この違いは解釈にも影響します。RSIが高いのは直近の上昇幅が下落幅より大きかったという意味で、ストキャスティクスが高いのは終値が範囲の天井付近にあるという意味にすぎず、どれほど強く上がったかは言いません。横ばいの後に少し上がっただけでも、範囲が狭ければストキャスティクスは100近くまで行きます。2つの指標を一緒に表示して片方が極端、もう片方が中間なら、範囲が狭い区間なのか、古い大きな足が計算の範囲から抜けた直後なのかをまず確かめるのが順序です。
80・20とクロス
慣例的に、80より上を買われすぎ、20より下を売られすぎの区間とみます。%Kが%Dを上や下に越えるクロスを流れが変わる兆しと読むこともあり、このクロスが80より上や20より下で出たときをより重く見る人も多くいます。ただし、この講座の実測(バイナンスの過去のローソク足)にはストキャスティクスが含まれていないため、こうした読み方がどれくらい当たったかは、ここでは数字で言えません。性格の似たRSIは、買われすぎの足の後に上がった割合がむしろ基準より高かったものの(RSIの記事)、計算の違う指標なので、その結果をストキャスティクスにそのまま当てはめることはできません。クロスを見るときによく挙げられる確認の順序はこうです。まずいまがレンジかトレンドかを価格チャートで判断し、次にクロスがどの区間で出たか、最後にそのクロスが確定した足で決まったかを見ます。80と20という数字も決まった法則ではなく慣例なので、変動の大きい銘柄ではもっと外側の基準を使う人もいます。基準線を越えたという事実より、その後再び基準線の内側に戻ったかを見る方法も使われます。
レンジとトレンドで変わる姿
価格が範囲の中で上下している間、ストキャスティクスは20付近と80付近を規則的に行き来し、%Kと%Dのクロスも範囲の上下で出ます。ところが価格が範囲を抜けて着実に上がり始めると、終値が14本の最高値付近で引け続けるので、%Kは80付近とその上に張り付くようになります。下の図の上昇区間でも、%Kが%Dを下に越えるクロスが80より上で何度も出ましたが、価格は短く休んでから再び上がりました。同じ基準線とクロスが、区間によってまったく違う結果につながったわけです。レンジ区間では範囲の上のほうで売る人と下のほうで買う人が繰り返し現れて価格が戻るので、範囲の中の位置を測るストキャスティクスの性格とよく合います。トレンド区間では新しい高値が範囲を上へ広げ続け、終値がいつも天井付近にあるので、80より上にとどまること自体がトレンドの姿です。そのため、ストキャスティクスを見る前に高値と安値が切り上がっているか、移動平均線が傾いているかを先に見る人が多くいます。トレンド中は、買われすぎ側のクロスより押し目で出る反対側のクロスに目を向けるというように、読み方を変えることもあります。
例: 架空の価格にスローストキャスティクス(14,3,3)を計算して描きました。左のレンジ区間では20付近と80付近の間を行き来し、右の上昇区間ではほとんど80付近とその上にとどまります。
ストキャスティクスRSI:RSIにストキャスティクスを重ねた指標
ストキャスティクスRSIは、価格の代わりにRSIの値にストキャスティクスの式を当てはめたものです。直近14本のRSIの最高値と最安値の間で、いまのRSIがどのあたりにあるかを0〜100で表し、TradingViewの標準はRSI 14、ストキャスティクス14、%Kの平滑化3、%Dの平滑化3です。RSIが直近14本の間、45から55の間にしかなかったなら、RSIが45から55に動くだけで、平滑化前の値は0から100まで動きます。それだけ敏感なので0と100に頻繁に届き、買われすぎ・売られすぎという名前が付く頻度もずっと高くなります。指標の上に指標をもう一度重ねると、元の価格との距離が遠くなります。ストキャスティクスRSIが100というのは、価格が高いという意味でもRSIが高いという意味でもなく、RSIが直近14本の中で最も高い位置にあるという意味です。RSIが40台にとどまっていても、ストキャスティクスRSIは100をつけることがあります。そのため、この値を見るときはRSIの元の値を一緒に表示しておくと勘違いが減ります。短い足で使うと数本ごとに0と100を行き来してノイズに近くなるので、どの足の長さで使ったかも一緒に書いておかないと比較になりません。
この記事が語らないこと
ストキャスティクスは、直近14本の範囲の中での終値の位置を要約した数字で、範囲の外のことや今後の向きは計算しません。期間と平滑化の値を変えると、基準線を越える回数やクロスのタイミングが大きく変わるので、どの設定が優れているかという判断もここではしません。このサイトのRSI レーダーとPro トレーディングチャートは、ストキャスティクスではなくRSIを表示します。ストキャスティクスを表示した別のチャートと並べれば、2つの指標が同じ区間をどう違うふうに要約するかを見られます。設定を過去のデータで試すときの落とし穴は、バックテストの記事で扱います。よくある勘違いは、「買われすぎ」という名前のせいで80より上をすぐ下がる場所と考えることです。名前は慣例にすぎず、その値が言っているのは、終値が直近の範囲の上のほうにあるという事実一つです。また、クロスがたくさん出る指標なので、うまくいった少数の場面だけが記憶に残りがちです。チャートをさかのぼって、当たらなかったクロスまですべて数えてみれば、印象と実際が違うことを確かめられます。
暗号資産と株式で違って見える点
ストキャスティクスは高値・安値を直接使うので、窓の影響を大きく受けます。株式は通常の取引時間が終わった後、翌日の始値が前日の終値から離れて始まることが多く、窓を開けて大きく上がった日はその足の高値が14本の範囲を一気に広げ、その後2週間あまりの間%Kの基準が変わります。サムスン電子やSKハイニックスが決算発表の翌日に窓を開けて始まる場合、米国の大型ハイテク株が取引終了後に決算を出して翌日大きく離れて始まる場合がその例です。暗号資産は24時間取引されるのでこうした窓はまれですが、代わりに短時間で長いヒゲを残す急変が多く、同じ問題がヒゲの形で現れます。韓国株には1日の値幅制限があり、ストップ高で引けた日は終値と高値が同じなので%Kが100に張り付きますが、これは買い注文が残ったまま取引が止まったという意味で、範囲の天井で売りが受け止めたという意味ではありません。14本の長さも違います。株式の日足14本は営業日でおよそ3週間で週末と休場日は抜け、暗号資産の日足14本は暦の上で2週間です。変動の大きいアルトコインは大型株よりずっと頻繁に0と100を行き来するので、市場ごとに別々に感覚をつかむ必要があります。
実践の点検順序
リアルタイムのチャートのストキャスティクスは、進行中の足のせいで特によく揺れます。いまの足の終値は現在値で、高値や安値が新しく出ると14本の範囲そのものが変わるので、%Kは1本の足の中でも0から100の間を大きく行き来しえます。取引中に%Kが%Dを上に越えた後、引ける直前に再び下に戻れば、そのクロスはなかったことになります。スローの設定は平均をとるので揺れは少ないものの、最後の足の値が確定しないのは同じです。この記事の図を含め、指標を解釈する言葉の多くは確定した足を基準にしたものです。短い足ほど足がすぐ確定して新しい足が始まることを繰り返すので、確定したクロスと進行中のクロスを区別しないと、合図が限りなく出ては消えるように見えます。画面を見るときは次の順序で点検すると勘違いを減らせます。
- 設定の3つの数字と足の長さが意図したとおりか確かめる
- 価格チャートでレンジかトレンドかを先に判断する
- %Kの位置と、クロスがどの区間(80より上、20より下、中間)で出たかを見る
- クロスは確定した足で決まったものだけを数える
- 直近14本の中に長いヒゲや窓があり、範囲を広げていないかを見る
- RSIも一緒に表示し、2つの指標が同じことを言っているか比べる
- 上位の足の流れと同じ向きかを確かめる
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